1.16.2012

「ビゴーを本当に知っていますか」

1月14日(土)澄み切った青空に、粉砂糖を振りかけたような日光の山々が美しく映える週末となった。日光の空気は凛として冷たく、清らかだった。

来日130周年のビゴー展は、私が理想とする大きさの展示空間に厳選された作品がテーマに沿って並んでいた。これまでの展覧会もそれぞれよかったが、なかにはキュレーションの介在がなく、貸し会場と化した美術館に、ビゴーといえば、作品の良し悪しの吟味もなく出展され、かえって美術家としての評価を落としてしまう恐れなしという感をもったときもあった。

しかし、今回は自分自身がその空間の性質を知り尽くしている学芸員の人の眼がしっかりと生きていた。また、磐梯山噴火や三陸大津波取材といった、土地と時機に一致したテーマについて、実際に掲載された紙面とともに丁寧に紹介されていた。

講演では、ビゴーが来日前にかかわった「ラ・ヴィ・モデルヌ紙」のコンポジション作品を掲出した。挿絵画家というよりは駆け出しのイラストレーターだったが、創作かカットかよく見極められていないまま最近の刊行物に出されている。本人の創作として全頁大で扱われているものはごくわずかである。今回の図録に入れていただいたが、縮小されているため、実際の紙面の大きさを実感していただきたかった。また、ジョルジュ・ラビの日本旅行の思い出を語った講演録とそこに登場する、ビゴーが歌ったシャンソンと思われる曲を最後に流した。ビゴーの祖父と交友関係にあったベランジェや、国民的な人気のあったナドーの歌である。いずれも自由主義、共和主義を歌で主張した作家たちであり、ビゴーが幼いころから慣れ親しんだ音だったことだろう。

来日130周年ピエロ祭としてのつたない話を、熱心にお聞きくださった参加者のみなさまに改めて感謝申し上げます。(山口順子)